【BARKS編集部レビュー】クラシック・ジャズの繊細な音色も再現する「HA-FXC71」と「HA-FXC51」

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音楽自体に長年の蓄積があり、それを再生する装置も紆余曲折を経て完成された感のあるクラシックとジャズを「HA-FXC71」「HA-FXC51」で聴いてみた。

クラシックとジャズ、すなわちアコースティックな楽器の響きを聴くということは、ppp(ピアニッシシモ)からfff(フォルティシシモ)まで、音の強弱、そして弦楽器なら弦のかすれた感じ、管楽器なら息の具合い、コントラバスの低音、打楽器のアタックまで幅広くダイナミックレンジの広い音を聴くということ。かなりヘッドホンのセッティングで聴き音が変わってくることになる。

弱い音、強い音とも、特定の音域や音色を持ち上げるのではなく、オーケストラの演奏したままに再生してくれることが望ましい。つまり、雑踏や電車の中では、特に弱い音“ppp(ピアニッシシモ)”は聞こえなくて当然なのである。その弱い音の粒までを楽しむのがクラシックの醍醐味なのだから。ということを踏まえて、「HA-FXC71」「HA-FXC51」で聴き比べてみた。

如実にわかるのが、音の広がりと輝き感とでもいうべき粒立ちの違いだ。この両モデルともヘッドホンが耳穴にすっぽりと入って外音を遮蔽してくれるので、完全に音に没頭できる。「HA-FXC71」は、ヴァイオリンのボウで弦を撫でただけという繊細な音を確実に再現してくれるのには驚いた。IKUKO KAWAI『REBORN』での女性らしい柔らかな音、それに寄り添う伴奏の和音との絡まりは、弱い音から強い音までしっかりと拾ってくれている。さらに低音部も強調されたものではなく、自然な力強さが伝わるセッティングになっているようだ。

松田里奈『イザイ』は無伴奏のヴァイオリン曲。これもボウと弦の擦れ具合の弱い音の艶がしっかりと聴きとれる。低音部での不協和音のねじれ具合も生々しく、張り詰めた緊張感が伝わってくる。「HA-FXC71」の自然な再生音は、クラシックが向いていると感じる。

エミリー・クレア・バーロウ『ビート・ゴーズ・オン』は、様々なジャンルの音楽を含んだポップスを美声で歌うジャズ・ソング・アルバム。これが「HA-FXC51」に合っているのだ。音がしっかりとまとまっており、すべての楽器が強く前面に出てくる。ウッドベースの低音がズバッと押し出され、ドラムのハイハット、スネアのアタック音、ピアノの軽やかなバッキングと相まって、粒が揃っているのを感じる。エミリーの声は低音域から中音域の地声部分が色っぽいのだが、この音域での押し出しが強い。こういうアコースティック楽器を使ったポップスでは、「HA-FXC51」のバランスがとてもよく響くようだ。

簡単な結論で恐縮だが、「HA-FXC71」は高音から低音、そして弱音から強音までを幅広く自然に再生するのでクラシックにとても合う。そして「HA-FXC51」は低音から中音域の押しが強いのでソフトジャズなどのポップス系の音に強みを発揮する。価格的にもそんなに高いものではないので、聴く音楽によって使い分けることをお勧めしたいヘッドホンだ。

text by BARKS編集部 森本

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